日本基督教団 信濃町教会 計画案(2002)
設計概要
信濃町駅から北へ向かう。広くなった車道。歩道にはプラタナスが心地よく繁っている。その街路樹に沿って数分歩くと、右手の小さなビルの向こう角に、ガラスに囲まれた開放的な1階と、その上に載せられた小礼拝堂がアイストップとして見えてくる。
教会堂の正面に立つと、前面に程良い屋外スペースが広がり、教会の人だろうか数名が立ち話をしている。この前面スペースに続くようにイチョウを囲む中庭が続いている。右手には船が碇泊しているかのような荘厳な会堂棟が建っている。建物のカーブのついた壁面に自然に導かれ、中庭に足を進める。そこには、日曜学校のこどもたちが、にぎやかにイチョウの廻りで先生と話をしている。この樹は、以前の教会の庭にあったあの樹だろうか。その先の玄関ホール越しに奥を見ると、これも昔からあったヒマラヤ杉とケヤキが、中庭のイチョウと会話を交わすかのように立っている。建物は新しくなったが、信濃町教会の敷地の記憶がそのまま蘇る。中庭に立ちガラス越しに右手を見ると受付とメイン階段が、左手にはエレベーターと図書・メディアコーナーで本を読んだりパソコンで何か調べている人たちの姿が見える。視線が気にならないようガラスはデザインされている。
玄関ホールに入る。右手受付脇のメイン階段から2階礼拝堂へと足を運ぶ。幅が広く緩やかで手すりも付いている。静かな光に上を見上げると、トップライトからはヒマラヤ杉の影が映り、正面の大きな窓からはケヤキの老木の若葉が美しい。
2階礼拝堂前にはロビー広がっている。受付、週報棚等が配置されている。ロビー脇のラウンジでは何人かが礼拝前の会話をしている。ラウンジも、先程通った中庭のイチョウと北のヒマラヤ杉に囲まれ、緑に溢れている。
中庭に面した入り口から礼拝堂に足を踏み入れる。そこには、聖壇の説教台を中心とした放射線状の集中式会衆席が300席ほど設けられている。正面聖壇上部のトップライトによって、改革派の伝統に従って配置された説教台・聖餐卓・洗礼盤が光に浮かび上がっている。10数メートルの高さに取られた側面の壁からは格子を通して朝日が穏やかに入り、光が舞っている印象を受ける。だからといって明るすぎないコントロールされた光である。ふと聖書の「光あれ」を思い浮かべる。天井には緩やかにカーブした集成材の梁が掛かり、その中に包まれるような感じを受ける。
会衆席後方は3段のスタジアム形式になっており、ここに聖歌隊が立ち礼拝との一体感を確保する。出入り口上部にはパイプオルガンが設置されている。これは通常のギャラリーほど高い位置ではなく、聖歌隊との関係も良い。
礼拝が終わって出口に向かうと、正面に中庭のイチョウが見える。その向こうには教会を訪れると真っ先に目に飛び込んでくる小礼拝堂が見える。礼拝堂の聖壇・中庭・小礼拝堂が一直線に構成されていることを感じる。
会堂は新しくなったのに、懐かしさを感じるのは何故なのだろう。
以前のままに配置の変わっていない樹の記憶だろうか。礼拝堂の木の色によるものなのか。
教会は建物が全てではない。そこで毎週行われる礼拝・説教・教会の活動、積み重ねられた歴史が、人々にも樹々にもそのまま受け継がれているからなのであろう。